古くからの原作ドラマファンとして、このアニメ化によるリメイクを、素直に喜び、かつ受け入れようと思います。
数ヶ月前、アニメ化の情報をキャッチした瞬間は、飛び上がる程に喜びました。
けれど、正直に言うと、時間が経つにつれて、嫌な予感が増大。
観に行く直前にいたっては「たとえ改悪でしかなかったとしても……」と覚悟を決める程に。
嫌な予感にかられたのは、致し方の無いこと。
宣伝の煽り文句が、2016年の某ヒット作を連想させ、「二匹目のドジョウ」を狙ったという悪印象が強くなっていったので。
その「2016年の某ヒット作」には興味がなく(や、観れば面白いとは思うよ、多分)、しかしそんなものにあやかっての商業行為のダシに「打ち上げ花火」が使われるなんて、あまりに嫌すぎます。
ま、落ち着いて考えれば、年末の「2016年の某ヒット作」の真似を目的として制作する期間などあるはずが無いので、単純に「広告の手法として、アレっぽい感じにしてみた」だけだったのかな、と。
以下、項目ごとに個人的な感想を述べたいと思います。
若干のネタバレも含まれますので、ご注意ください。
【結論】
現代的かつアニメに翻案するとなると、これがベストの完成度かな、と。
不満点はいくつかあります。
けれどそれは、原作ドラマが好きで、そこに固執するが故の不満点であり、公正に評価するなら、そこを抜きにして考えなきゃいけない、と思います。
【不満点】
- 「今日だけは一緒にいたい」
……重要な要素だけど、判りやすくしすぎ。 - 音楽がREMEDIOSじゃない!
……ま、それはしょうがない。映画に使われる音楽はいろいろと事情があるし。 - 飯岡っぽい感じも見受けられるけど、飯岡とは違う……
……飯岡ラブなわたしとしては、とても残念。(銚子が主なロケ地に。ま、しょうがない) - 学校が豪華
……でもまあ、現代的風景ならこんなもんでしょ。でも、神社はあそこまで豪華にするこたぁなかった気がする。(玉崎神社でいいじゃーん!) - え、電車に乗っちゃうの!?
……でもまあ、岩井俊二監督の当初の構想にあったと云う「銀河鉄道」っぽい感じには沿っているか。 - 安易にやりなおししすぎ
……とは云え、「もしも玉」のギミックを活かすなら、そうなるしかなかったか。
や、こういうのは嫌いじゃないのよ? 「ひぐらしのなく頃に」とかも大好きだし。でも安易な印象も拭えない……。 - 島田釣具店を再現して欲しかった……
……でも店先の様子は、多少近かった気はする。
【嬉しかった部分】
- 「今日だけは一緒にいたい」
……なずなの、最も偽らざる気持ちを、明確に描いてくれた。
これが判らないと、なずなは「意味不明な言動で典道を振り回す意味不明な女の子」という印象になるしね。 - 「Forever Friends」を使ってくれた!
……他の音楽は諦めるとして、もしこれすらなかったら、わたしゃ暴動を起こしてたぞ。 - 飯岡とは違うけど、飯岡っぽい風景もあった
……これについては後述。 - 原作ドラマのシチュエーションを踏襲したシーンが結構あった
……原作を愛してやまないわたしとしては、それだけでもう嬉しいっす。 - 稔の「好きだー!」の対象が……(笑)
……このシーンが出てきたら、どう言うのかは気になっていた!
なお、和弘の「セーラームーン」はさすがに消えていた! - プールサイドに寝転びつつ、片足を水につけているあの構図がそのまま登場!
- 祐介の心に芽生えた「もしも」もクローズアップ
……これは、アニメ版オリジナル要素での美点だと思う。
【舞台の空気感】
飯岡ではないけれど、飯岡っぽい場所が舞台となっています。
わたしとしては「明確に飯岡にして欲しかった……でもまあ『茂下(もしも)』なら仕方ないか」という感じ。
と云うことで、風力発電が飯岡っぽいけど、茂下という町が舞台よ、と。
(原作の当時は風力発電なんてなかった気がするし、原作ドラマにも出てこないけど)
飯岡ではないけど、飯岡っぽさが漂う空気感、それでひとまず満足。
【追記】灯台は犬吠埼がモデルと聞いたので、飯岡再訪のついでに銚子まで足を伸ばしたら、なるほど、町並みも銚子が主なモデルなのね、と納得。
【もしも玉】
原作ドラマは「if もしも」という番組の中の1作品に過ぎず、その番組の趣旨を知らないと、意味不明な部分があります。
当然、リメイクとなるとその辺をどうにかうまく処理しなければいけないことに。
そこで登場するのが「もしも玉」と云う訳。
個人的には、まずどうしても原作が念頭にあるだけに、アニメのオリジナル設定が出てくるとそこで萎えてしまいます。
が、アニメらしい演出で、かつ、上記の問題をうまく処理するには、やはりこういうギミックが必要なのは自明の理。
むしろ、こうするより他に選択肢はなかったのかもしれません。
これも、ひとまず受け入れつつ鑑賞を続行。
後にパンフレットを見ると、この「もしも玉」は岩井俊二のアイデアだったようですね。
岩井俊二監督が言い出したことなら、仕方ない。
【Forever Friends】
プールじゃ……ないのか!!
しかし、もともと「もしも玉」を拾った場所であることを考慮すれば、アニメ版としてはふさわしいシーンとも言えます。
余談だけど、これを期にカラオケに配信されると嬉しいな、と。
長年の悲願だったし。
エンディング曲はもう配信されているけど、ヒットしてくれたら「Forever Friends」も配信されるかなぁ、と云う下心を秘めてお待ち申し上げます。
(実は数年前に一度、JOYSOUNDの配信投票に載ったことがあるのよ。でも、票がのびず、配信されることなく消えてしまった……今や投票システムは廃止されているので、これが最後のチャンス!)
【追記:2017.08.30】よく見たら、JOYSOUNDで配信されてるのを発見! やはりJOYSOUNDは頼りになります! 狂喜乱舞!
【アニメ・オリジナル要素でよかった部分】
- くだけた「もしも玉」の、無数のかけらの中に、祐介の「もしも」もあったシーンは、なんだか熱いものがこみあげてきました。
- 飯岡ではない別の「茂下」という町ではあったけど、海に面した坂道の町というシチュエーションは大好きよ。
- 灯台、でかすぎ。でも、周囲に修繕用か何かの足場を設けることで、舞台映えはしていた。(最初は「飯岡灯台じゃない!」と不満に思ったけど)
- 設定を中学生に変更。アニメ版は、小学生より中学生の方がよいかもしれない。
【原作ファンとしての本音】
原作原理主義として陥りがちなのが「原作と違う部分を否定したくなる」という心理。
とはいえ、そこに固執すれば、何事も不満しか残らなくなります。
そこに想いを馳せ、上映が始まる寸前に深呼吸し、気持ちをリセットした上で鑑賞できたのはよかったと思います。
例えば演劇などでも、演出家や役者が違えば、がらりと印象も違ってしまうし、場合によってはテーマそのものが変わってしまうことすらあります。
ロック・ミュージカルとして名高い「ジーザス・クライスト・スーパースター」などは、無数の演出、無数の解釈が存在します。
これなどは「基本の演出はなく、無数のバージョンがあるのみ」と言われています。
「打ち上げ花火」は「原作ドラマ」が基本とは思いますが、それに加えて「アニメ版による新釈バージョン」が加わった、ただそれだけのこととして受け入れればよいかと。
幸いにも、アニメ版は「どこにも見るべき価値がない駄作」にはならないでくれた、いやむしろ、良かったかもしれない……と思いますしね。
【リメイクの意義】
わたしは、名作はリメイクされていって欲しいと考えています。
ドラゴンクエストも、新しいハードでリメイクを繰り返し、過去の名作を今に伝えています。
リメイクされることで、このままでは埋もれて忘れさられてしまったかもしれない「もしも」の危機を回避する可能性が生まれます。
少なくとも、今度のアニメ化によって、原作ドラマにも興味を持ち、「こっちの方がいい!」と思ってくれる人もいるかもしれません。
また逆に、原作ファンだけど「アニメ版の方が好き!」と思う人もいるかもしれません。
何よりも、どんなきっかけであれ「打ち上げ花火」がリメイクされた事実は、これが人から愛され続ける名作であることを証明している、とわたしは思うのです。
(もちろん、リメイクの出来がどうしようもない駄作になってたら、その点に関しては怒りまくりますけどね、うん)
近年は飯岡町へ足を運んでいなかったけれど、久しぶりに訪れてみたいな。
ネット上の地図で、島田釣具店が更地になっているのを発見した時はとてもショックで、ますます足が遠のいていたけれど……。
【追記:2017.08.26】行ってきました、久々の飯岡へ! おかげで「飯岡町・ロケ地探訪」のページがかなり補強できました。